「ジャンプをしたら身長が伸びる」
このような説を聞いたことはありませんか?
たしかにジャンプを多用するバスケットボールやバレーボールの選手は大きな人が多いので、信憑性もあります。
身長の高い子供に育ってもらいたいとバスケットボールやバレーボールを子供が小さいうちからはじめさせる親御さんもいるほどです。
しかし、本当にジャンプをするだけで、身長は伸びるのでしょうか。
その疑問を解消するため、子供の身長を伸ばすために適切な運動とは何かについて解説していきます。
子供の身長を伸ばすのに運動が必要な二つの理由
一つ目の理由は、食事と睡眠が関係しています。
成長期の子供は、良質な食事・睡眠をとることによって栄養を効率よく蓄えることができ、身体がすくすくと成長していって、身長も伸びていきます。
運動をすると、成長に大事な食欲が増進され、運動による疲労から深い睡眠をとれるようになります。
そのため運動は、身長を伸ばすのに必要な要素の一つなのです。
二つ目の理由は、運動している最中や運動した後に、成長ホルモンが多く分泌され、身長が伸びる原因である骨の成長に深く関わっていることにあります。
骨の成長とは、骨がそのまま伸びるわけではなく、「骨端軟骨(こったんなんこつ)」という箇所が伸びたり、太く大きくなるということです。
骨端軟骨は、身体にある骨の先端にある軟骨のことで、そこが成長することで、子供の身体が大きくなっていくという構造になっています。
そして運動をすることで骨端軟骨が刺激され、骨の成長、ひいては身体の成長につながっていきます。
ジャンプをしても身長は伸びない?
ジャンプをする動作によって身長が伸びるといわれてきた原因の一つには、「ジャンプをすると骨端軟骨を縦方向に効率よく刺激できる」という話にあります。
しかし実は、近年の研究で「ジャンプをする動作が子供の身長に“特別な影響”を与えていない」という事実が分かってきたのです。
ジャンプを繰り返すだけの動作では、身体の一部にしか圧力がかからないため、身体の伸長にとって“特別な影響”にはならないようです。
とは言え、ジャンプという動作も立派な運動になるので、他の動作を織り交ぜながら運動効率を高めて行くとより効果的な運動になります。
ジャンプという運動自体が無駄という意味ではなく、ジャンプに限らず、ある一定の動作を繰り返す運動だけでは、十分な身長効果を得ることができないということです。
身長を伸ばすには全身運動が必要!
子供の身長を効率よく伸ばすのに、縦方向への運動も必要ではありますが、より重要となるのが「全身を使った運動」です。
子供の運動をジャンプなどの一つの動作に限定させることは、子供の身長を伸ばすことに特別効果的ではありません。
ジャンプだけではなく、身体を曲げたり、伸ばしたりすることで、骨端軟骨へ均等に栄養を行き渡らせ、骨の成長を促進させることが、身体の伸長につながります。
バレーボールやバスケットボールのようなジャンプをするスポーツも、上体をそらす、身体をひねるなど、身体全体を使った動きになることで、身長が伸びやすくなります。
また、木のぼりやアスレチックなどスポーツ以外の運動も、全身を使って遊ぶものであれば効果的な全身運動となります。
身長を伸ばすのに、適している運動・適さない運動とは?
具体的にどのような運動が全身を使う運動にあたるのでしょうか。
また、子供の身長が伸びることを阻害してしまう運動についても考えてみましょう。
全身を動かし、身体を曲げ伸ばしする運動で代表的なものに、水泳やストレッチが挙げられます。
ストレッチは場所をとらないためどこでもできるメリットもあります。
起床後や就寝前、お風呂上りなどに、十分程度伸びなどをすると効き目があるでしょう。
バレエやダンスなどは、身を反らしたり屈伸したりと全身を大きく使うので、子供の身長を伸ばすことにつながる運動といえるでしょう。
ジョギングや軽いマラソンも適度な縦方向の運動にもなるので効果的です。
反対に、負荷をかけすぎる運動は、成長期の子供にとって悪影響を及ぼします。
成長途中の骨端軟骨が負荷に耐えきれなくなり傷つくおそれがあるからです。
つまり、ジャンプだけを過剰に繰り返したり、重量があるものや強い衝撃によって骨端軟骨に負荷がかかり続けると、子供の身長を伸ばすどころか、逆に伸ばしにくくする可能性もあるということです。
特定の部位を無理に強くさせようとする過度な筋力トレーニングなども、子供の成長を妨げることになりかねません。
いくら身体の伸長に効果的な運動だとしても、やりすぎて体力を消耗させてしまうと成長に必要な栄養を失い、逆効果になりうるのです。
成長期の子供に大切な運動とは
運動は成長期の子供にとって、とても重要な要素のひとつであり、子供の身長が伸びていく過程に運動が必要なのは間違いありません。
しかし、間違った認識で無理にひとつの運動を過度に繰り返させると、かえって子供にストレスをもたらし、身体の成長に悪影響を与えることになります。
子供の身体を伸ばすためには、全身を使い、負荷がかかり過ぎない程度の適度な運動が大切になります。
そのためには、無理をせずのびのびと全身を使って運動する環境を与えてあげることが、子供のスムーズな身体の成長につながるのではないでしょうか。